核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

アリストパネース 『リューシストラテー』(『女の平和』 紀元前411年上演)

 アリストパネース反戦喜劇シリーズ第二弾を紹介します。
 むかしの訳では「アリストファネス」の『女の平和』となっていました。
 原題である主人公の名前リューシストラテーは、リューシス(解体)とストラトス(軍隊)の合成語の語尾を女性形にしたもので、日本語なら「戦争トメ子」みたいな感じかと。私は基本的に古代ギリシア語の長音は省略する主義なのですが、今回は書籍紹介ということで、『ギリシア喜劇全集 3』(岩波書店 2009)の訳者、丹下和彦氏の表記に従います。
 前作『平和』から10年。「ニーキアースの平和条約」は(アテーナイ側の、というよりもアルキビアデースの個人的野心によって)破られ、アテーナイとスパルタは戦争を再開していました。このペロポンネーソス戦争を終わらせるべく、女性市民リューシストラテーが立ち上がります。
 
   ※
 カロニーケー 女手ひとつでですって?それはまたとんだ痩せ腕だのみ。(略)
 リューシストラテー それこそがギリシア救済にと、わたしが恃(たの)むものなのです。
  サフラン色の着物、香水、平底の上靴(スリッパ)、
  紅、そして透けた下着。
 カロニーケー いったい何をたくらんでいるんです。
   ※
 
 ・・・リューシストラテーが何をたくらんでいるかについては、当ブログの2011年9月22日(http://blogs.yahoo.co.jp/fktouc18411906/archive/2011/09/22)でのネタバレをごらんください。
 前作『平和』での戦争停止は女神エイレネーの恩恵だったのですが、今回は神々は一切出てきません。人間社会のわくの中だけでの、実現可能な戦争停止案の物語です。
 かつて宗教のあったところに、文学をあらしめよ。武力により大きな力で対抗するのではなく、武力の無効化をめざす思想。それは私の博士論文のテーマでもあります。