核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

アリストパネース 『蛙』(紀元前405) パラバシス~エピソードⅡ

 演劇の形で演劇を語る、世界最古のメタフィクションを引き続き紹介します。内田次信氏訳『ギリシア喜劇全集 3』(岩波書店 2009)より。
 真の詩人を求めて冥界に下りた、酒と演劇の神ディオニューソス。探していた悲劇詩人の一人エウリーピデースは見つかったのですが、そこでもう一人の大詩人アイスキュロスがエウリーピデースに勝負を挑みます。なお、三大詩人の最後の一人ソポクレースソフォクレス)は現在アイスキュロスに座を譲っているのですが、もしアイスキュロスが負けたら自分も戦うと宣言しました。
 
   ※
 召使い アイスキュロスとエウリーピデースがやり合ってるのさ。(略)
       ここでとてつもないことが起こりそうだぞ。
       秤で文芸をはかろうというのだから(略)そして言葉の定規や肘ものさしや折り畳み型枠や(略)
       三角定規や楔を持ち出すらしい。
   ※
 
 ・・・あったんだ三角定規。さすがピタゴラスの出身地(厳密にはギリシア本土じゃなくサモス島らしいけど、アテナイの海軍基地ということで)。
 この一段で注目したいのは、ディオニューソスの従者とプルートーン(冥界の神)の召使いのやりとりです。
 「うちの主人は酒と女のことしか知らない」とか、自分の主人の陰口を言い合っているうちに、すっかり意気投合する様が描かれています。アリストパネースは別に奴隷制廃止論者というわけでもないのですが、「海戦に参加した奴隷を解放する」政策を劇中でほめています(私は賛同しません)。プラトンアリストテレスなんかより、はるかに開かれた思想家だったのではないでしょうか。
 そして重厚なるアイスキュロスと軽妙なるエウリーピデースが火花を散らすエピソードⅢに突入するわけですが、続きはまた。なにしろ情報量が多い上に、じっくりと語りたいので。