核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

アリストパネース 『鳥』(紀元前414年)

 平和・民主・女権を訴える古代ギリシアの喜劇作家アリストパネースが、ついに動物の権利問題にふみこんだ問題作。腐敗したアテーナイに嫌気がさした二人の旅人が、鳥たちの国にたどり着きます。
 人間だとばれて八つ裂きにされそうになった二人は、必死に鳥たちをおだて上げます。


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  ペイセタイロス 鳥が大地よりも先に、神々よりも先に生まれたとなれば、一番年長なのだから、王権が鳥たちのものになるのは正当ではないか。(略)いいか、大昔、人間たちを支配し王位に就いていたのは神々ではなく鳥たちであったということ、その証拠はたくさんある。(略)
 あなた(鳥)を神、あなたをクロノス、あなたをゼウス、あなたをゲー、あなたをポセイドーンとみなすなら、かれら(人間)にはよいことがすべて手に入るだろう。
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 ・・・調子にのった鳥たちは、人間から独立したポリス(都市国家)の建設と、神々への神聖戦争(本来は聖地デルポイをめぐる戦争のことですが、ここでは文字通りの意味です)を宣言します。
 天空のポリス、新都ネペロコッキューギアーの噂は地上にも広まり、建国の偉業をたたえる詩人や予言者や法律家がアテナイからやってきますが、鳥のアルコーン(首長)となったペイセタイロスがすべて追い返し、この国が人間ではなく鳥のものであることを宣言します。

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 コロス (人間が鳥を虐待してきたさまを合唱した後)わたしたちは次のような布告を出したい。もしもあなた方の中に中庭で鳥たちを籠に閉じこめ飼育している人がいれば、解放せよ、これがわたしたちの言葉だ。
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 ・・・クロヅルが石を運び、ウズラクイナがくちばしで形を整え、数万羽のシュバシコウがレンガ造りに従事し、ついに100オルギュイア(180メートル!)の城壁が完成します。地上と天空の間にこんなものを建てられては神々は困るわけで(どうやって「建っている」のかは不明)、ポセイドーンやヘーラクレースが恫喝に訪れるわけですが、ペイセタイロスはゼウスの遺産(お亡くなりになったそうです)をエサにヘーラクレースを味方につけ、ついにゼウスの娘バシレイア(「支配」の擬神化)を花嫁に迎えます。そして盛大な婚礼が行われ、鳥たちがペイセタイロスを「神々の中で最高の方よ」と讃える場面で幕となります。
 『ギリシア喜劇全集2』(岩波書店 2008)の、訳者久保田忠利氏による解説によれば、19世紀の学説では、「ペイセタイロスはアルキビアデースに弁論家ゴルギアースを加味した人物」と解釈されていたようです。野望と冒瀆の人アルキビアデースについても、またいずれ語りたいと思います。