いや、私は基本的にカール・ポパーを尊敬しているんですけど、この件については一考の余地があります。
※
ヘラクレイトスは、大衆を蔑視する貴族主義的な思想家だという定評がある。その中でも代表的なヘラクレイトス批判者は、カール・ポパーである。彼の考えでは、プラトンは貴族階級に属し、古い氏族的な社会の伝統を護持するイデオローグであり、ヘラクレイトスはその先行者であった。
柄谷行人 「哲学の起源」 第四回 『新潮』 2011年10月号
※
歴史上のヘラクレイトスの実像についてはわからないことが多いのですが、少なくとも柄谷は、ヘラクレイトスを反デモクラシーであり、戦争・闘争を称揚する人と認めています。
それでも柄谷がヘラクレイトスを擁護するのは、彼が「戦わずして従属状態の下で安全を享受したエフェソス」の出身者であったという理由です。紀元前490年代のイオニア地方はアテネの援助のもと、ペルシアからの独立(イオニアの反乱)を起こしたのですが、「エフェソス人は、他のイオニア人の反乱と滅亡を横目に見ながら生きのびた」(柄谷の言葉によれば)のであり、ヘラクレイトスはそうした不正義の平和、強者への隷属を望む民衆を軽蔑していた、のだそうです。
実は私はペルシア戦争期はそんなにくわしくないので、結論は文献(とりあえずヘロドトスあたり)を読んでから出すことにします。
ただ確実に言えることは、
1 現在の柄谷行人は「不正な平和は正義の戦争に劣る」と考えている(『探究掘戮虜△楼磴辰燭呂此
2 大国への従属によって得られた一国の平和は、「ここではない国での戦争」の遠因となりかねない
ということぐらいです。
それが2012年の日本と何の関係があるのかって。2番をもう一度読んでください。