核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

松原仁 『将棋とコンピュータ』 共立出版 1994 その2

 冒頭から、小林秀雄の「常識」で読んだような話題です。共通の出典があるかはいずれ調査。
 
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 もしかりに将棋の神様が二人いたとすれば、先手と後手が決まったときにたしかに勝負はついているのです。
 将棋には必勝法があります。(略)ゲーム理論の教えるところによると、「二人零和有限確定完全情報ゲームには必勝法が存在する」ということになっています。(2ページ)
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 本文に即して、ゲーム理論の用語を説明します。
 
 「二人」―二人でするゲーム。麻雀なら四人。
 「零和」―一方の勝ちともう一方の負けを加えると零になるゲーム。
 「有限」―いつかはかならず終わるゲーム。
 「確定」―偶然的な要素(サイコロなど)が入らないゲーム。
 「完全情報」―プレーヤーにすべての情報が与えられるゲーム(隠し手札などがない)。
 
 将棋はこれらの条件を満たすために、両者が最善をつくすと、先手必勝・後手必勝・引き分けのいずれかに終わるはずなのです。
 サンプルとして、著者は1×3のミニ将棋を提示します。
 両者玉一つずつ、パスなし。これは誰がどう指そうと後手必勝(先手玉前進→後手玉が取る)
 1×4であれば同じく先手必勝(先手玉前進→後手玉前進→先手玉が取る)。
 1×5であれば・・・先手玉前へ→後手玉前へまでは同じ。先手側は前進すると取られるので後退。ここで後手側に「選択の余地」が生じ、後退すると千日手になりかねませんが、前進すれば後手必勝(1×3と同じ)。
 以下、「1×nのミニ将棋は、nが偶数のときは先手必勝で、奇数のときは後手必勝」(6ページ)という法則が成立します。
 9×9の本将棋でも基本的にはおなじはずなのですが、選択肢の数が天文学的(10の200乗だそうです)になるため、最新(1994年時点)でのコンピューターでもすべての場合を読むことは不可能でした。その後コンピューターの性能は飛躍的に進歩し、元名人を負かすまでに至りましたが、それでも「すべての可能性を読み切る」のは不可能です。
 では、メルツェルズチェスプレーヤーはいかにして実現したか。長くなるのでいったん切ります。