核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

山口守圀 『〈増補版〉 文学に見る反戦と抵抗』 海鳥社 2001初版 2011増補

 八重洲ブックセンターで見つけて、さんざん迷ったあげく買わなかった本です。
 大正期以降の反戦小説の一覧としては価値あるものであり(私の論文『明治の平和主義小説』とは一編も重複していません)、労作であることは確かです。
 しかし、以下のような箇所を読むと。黒島伝治反戦論を、著者は以下のように紹介しています。
 
   ※
 つぎの〈プロレタリアと戦争〉においても、階級社会からの脱却、すなわち社会主義社会の実現以外に戦争は根絶できないとして、被支配階級と支配階級との闘争には進歩的価値があることを強調する。
 ブルジョア平和主義者や無政府主義者は戦争一般に反対するが、戦争に残虐行為や窮乏、苦悩がともなうものであるとしても、反動的な制度を打破するために役立つ戦争であれば人類の進歩のために肯定されなければならない。(16章 黒島伝治反戦小説 367ページ)
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 そして著者(黒島伝治ではなく山口氏)はレーニンの「社会主義と戦争」(1915 大月書店「レーニン一0巻全集
」第六巻)をながながと引用しています。階級闘争のための戦争を肯定する趣旨の。
 大正時代や昭和初期なら知らず、なぜ2011年4月(増補版あとがきの日付)にもなって、レーニン全集なんてものを聖典のごとく掲げなければならないのでしょうか。
 私はレーニン黒島伝治とちがって、すべての戦争を否定する立場です。