核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

第五答弁 人間と動物の間編 (白水社 『デカルト著作集 2』より)

 3月18日に書くはずでしたが、パソコンの不調により(本文欄だけ書き込めなかったのです)遅れてしまったことをお詫びします。別に深刻に悩んでいたわけではありません。
 まずは、ガッサンディの「動物にも精神らしきものはある」という反論に対する、デカルトの答弁を引用します。
 
    ※
 あなたが、犬もまた肉体から成り立っていることを見ておられるために、あなたのうちにあるのと同じものがすべてまた犬のうちにもあるとお考えになっているから、という理由以外には、いったいどういう論拠によってあなたは、犬がわれわれと類似した仕方で[物事を]判別するということを確実なこととして肯定なさるのか、私にはわからないのです。しかし、犬のうちではいかなる精神[の存在]にも気がつかないこの私としては、精神のうちに私が認識するものに類似したものは何も犬のうちには見つけ出されない、と考えます。
 (434~435ページ)
    ※
 
 あんまり再反論になってない気もしますけど、デカルトにとって「動物には精神はない」ということは当然であって、あらためてむしかえすまでもなかったのでしょう。『方法序説』でも書いたことだし。
 デカルトは法服貴族出身で軍人経験者なのですが、猟犬とか軍馬を見て、人間に似た心の働きを感じたことはなかったのでしょうか。いや、別にデカルトは冷たい人だとか言いたいわけではありません。私も愛犬家には程遠いので。
 ただ、「精神は脳からは独立に作用しうる」(434ページ)という一節にはちょっと驚きました。脳科学が進歩した2010年代でも、脳と心の関連が解明しつくされたわけではないのですから。考える余地はありそうです。