核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

第四答弁(白水社『デカルト著作集 2』1973)

 私が神学だのスコラ哲学につっこみをいれ出すと際限がないですし、不毛だとも思うので、デカルトの答弁をなるべく忠実かつ簡潔に要約するにとどめます。
 
・人間的精神の本性について。人間の行動にも、動物と同様に、「精神に依拠しないもの」「心がそれに気づいていないとき」はある。心臓の鼓動、食物の消化、睡眠中の人の呼吸など。しかし、それらの点で人間と動物が似ているからといって、人間特有の精神を否定することはできない。(278~279大意)。
・神について。「デカルトの循環論法」と呼ばれるものについては、「循環を犯してはいないということ、そのことをすでに十分に、「第二反論」への「答弁」、第三項ならびに第四項で私(デカルト)は、実は、実際に明晰にわれわれの知得するものを、われわれが以前に明晰に知得したと想起するものから、区別することによって、説明いたしました」(294~295ページ)とのこと。
 (なお、私(菅原)は該当箇所を読み返しても、結局理解できませんでした。)
神学者たちに疑念を抱かさせうる諸点について。デカルトは実在的な「偶性」(色、香り、味など)を否定してはいないので、アルノーの反論(デカルト哲学と聖体の秘蹟との矛盾)は回避される。パンの表面の偶性が変わらないことと、その実体が変化していることは両立する。
 
 何もキリスト教徒でもない私が、神学と哲学の矛盾に悩む必要などなさそうなので、ノーコメントとします。次のガッサンディによる第五反論では、また哲学の話に戻るはずです。それも物質と精神についての。
 
 なお、シンポジウム「虚構とは何か」には結局出席できませんでした。長時間の旅行に出る気力がなかったもので。みやげ話を期待していた方、ごめんなさい。