核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

原因療法としての平和主義―松元雅和『平和主義とは何か』より

  つねづね考えていたことを、私よりも的確に表現してくださったという感じなので、松元氏の著作の終章から引用させていただきます。
 
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 国際紛争を病状の一種として捉えると、平和主義者が提案する処方箋は、対症療法というよりも原因療法に近い。勢力均衡や集団安全保障などの処方箋は対症療法的である。即効性があり、効果が目に見えやすいが、病状を根本から治療できるかどうかは疑わしい。それに対して、予防措置が主となる原因療法が実を結ぶまでには、普通長い時間がかかる。医療現場と同じで、事態の深刻さに鑑みると、つい対症療法に頼りがちになってしまう。だからといって、現状に満足することができないならば、原因療法としての処方箋を完全に手放してしまうわけにはいかないだろう。
 (217~218ページ)
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 平和主義とは、効くかどうかまだ定かでない新薬のようなものにすぎない、というのが現状です。ゆえに、平和主義は非平和主義者に怒りをぶつけるよりも、まず自分の処方箋が本当に根本的な治療法であるかを自問し、その上で非平和主義者にプレゼンテーションするべきでしょう。上記文を読んでの私の感想はそういう感じです。
 松元著の力点は、「非平和主義との対話」を前面に打ち出しているところにあります。私も、平和主義たるものは、非平和主義者も魅力を感じるような代替案を、積極的に提示していかなければならないと思うのです。