核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

村井弦斎『子宝』(『婦人世界』1912(明治45)年1月号~1913(大正2)年12月号)

 ひとまず「平和主義全般」の項に分類しておきましたが、日露戦争日清戦争への直接的な批判があるわけではありません。物語の大半は嫁姑戦争…というと不謹慎ですが、「悪意ある他者と、いかに非暴力の精神で共存していくか」といった主題です。
 まずは登場人物一覧を。
 
 源次  主人公。貧しい漁師の子だったが、資産家夫婦に見込まれて養子となる。
 敏雄  梅岡男爵の長男。はじめは田舎育ちの源次を見くだしていたが、後に親友となる。
 喜代子 敏雄の妹。後に源次と結婚し妙子を産む。後半のヒロイン。
 剛蔵  源次の養父で百五十万円の資産家。妻のお瀧にふりまわされがち。
 お瀧(たき) 源次の養母であり喜代子の姑。屈折した性格で源次や喜代子を苦しめる。
 
 今回の目玉はこのお瀧でしょう。これまでの弦斎作品には出てこなかった、妙に生々しいタイプの悪役です。