ひとまず「平和主義全般」の項に分類しておきましたが、日露戦争や日清戦争への直接的な批判があるわけではありません。物語の大半は嫁姑戦争…というと不謹慎ですが、「悪意ある他者と、いかに非暴力の精神で共存していくか」といった主題です。
まずは登場人物一覧を。
源次 主人公。貧しい漁師の子だったが、資産家夫婦に見込まれて養子となる。
敏雄 梅岡男爵の長男。はじめは田舎育ちの源次を見くだしていたが、後に親友となる。
喜代子 敏雄の妹。後に源次と結婚し妙子を産む。後半のヒロイン。
剛蔵 源次の養父で百五十万円の資産家。妻のお瀧にふりまわされがち。
お瀧(たき) 源次の養母であり喜代子の姑。屈折した性格で源次や喜代子を苦しめる。
今回の目玉はこのお瀧でしょう。これまでの弦斎作品には出てこなかった、妙に生々しいタイプの悪役です。