昨日は非殺傷弓矢は無理があるとか書いてしまいましたが、日本古来の「鏑矢」(かぶらや。音を立てる矢)というものの存在を忘れていました。それなくしては成立しない『平家物語』の名場面も。
源平合戦のさなか、沖(平家側)から、扇を持った女官の舟が現れました。「射よ」との挑発と判断した源氏側は、名手の那須與一(なすのよいち。「与一」とも)に命じたところ、かぶらの音も高らかに、見事扇を射落としました。源氏はもちろん平家方すら感動し、戦闘中なのも忘れて舞いはじめる武者も出るほどでした。
いい話です。与一が次の矢で、舞う男を射たりしなければ。「ああ射たり」といふ者もあり、「いやいや情けなし」といふ者も多かりけり。私は情けなしに一票。
結局、弓矢は使いようでは非殺傷兵器にもなりうるという程度の教訓しか、この物語からは引き出せないようです。