当ブログがかつて集中的に追ってきた無神論者で独裁者のクリティアスや、矢野龍渓『経国美談』で日本に知られたテーベの覇者エパミノンダス。そのあたりがどう書かれているかと読んでみたのですが、二人ともわりと簡単に片づけられてました。リーダーシップのある男を追求し続ける塩野氏にしてみれば、この二人など前座にすぎないということでしょう。表紙をでかでかと飾る、リーダーシップの権化に比べれば。
マケドニア王フィリッポスの子、アレクサンドロス。本文中のたとえによれば「ダイヤの切っ先」のごとく、愛馬ブケファラスと共に、常に最前線を突き進み、ギリシアからエジプトへ、ペルシアへインドへと連勝を続けるその一代記は、私にさえある種の感動を与えました。塩野著に限らず、ギリシア人の物語は人の血を熱くさせます。
反面、生涯を反戦で通した喜劇作家アリストファーネス(同書ではこの表記)は、半ページほどで片付けられてます。
戦争を進める者はかっこよく見え、戦争を止めようとする者はやぼったく見える。このイメージをなんとかしない限り、平和な未来は訪れないことでしょう。この認識を「将軍」論に生かしたいものです。