すげー読みたくなるのですが単行本化はされてない未完の作。
山田俊治著(二八二頁)よりあらすじをさらに要約します。
文久三年(一八六三)。ヒロイン阿高の夫賢之丞は、紀伊派と一橋派の政争に敗れて失踪し、阿高は長坂という男の後妻となります。
嵐の夜、阿高は物語を読んで泣き、「凡そ世の中の事と云ふものは、虚(うそ)かと思へば実(まこと)」と、侍女に以前に読んだ物語を語ります。
鎌倉武士の娘阿嵯峨の許嫁形原は、執権扇谷と山内の政争に敗れて失踪し、阿嵯峨は心ならずも跡部の後妻になるという、どっかで聞いた筋。
そして嵐の翌日。遭難者の中に形原という美男がいて、侍女は物語中の形原かと告げて、阿高が形原に会いに行くところで中絶だそうです。
鎌倉武士の執権扇谷と山内?そして幕末の嵐で救助?タイムワープ物でしょうか。朝のガスパールでしょうか。
山田著は、「虚構と現実を交差させた実験的な試み」(二八三頁)と評価しています。「悪因縁」ということは、阿高は過去、虚構、未来の三世にわたって思い人に失踪され続けるのでしょうか。