核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

分岐する迷路のような物語

 (今回はいくつかネタバレありで)

 たとえばO・ヘンリーの「運命の道」。詩人志望者の若者が、二手に分かれた道に出ます。右か、左か、引き返すか?

 この小説の特異さは、その三つの選択の顛末に、それぞれ一節を割いている点です。

 未来が分岐する物語。ボルヘスの「八岐の園」もそんなテーマを扱ってた気がします。

 1980年代にブームになった、社会思想社の『火吹山の魔法使い』をはじめとするゲームブックは、読者の選択で物語の展開が変わるというふれこみでした。私も当時夢中になったものです。

 が、不満もありました。選択肢が豊富なように見えても、ハッピーエンドにたどりつける道は結局ほぼ1本で、それを見つけてしまえば終り。自由とは何かと考えたものです。ゲームブックでの例外は、同社の『冒険者の帰還』で、

 

 

 

 (大ネタバレ)

 

 

 

 ハッピーエンドが存在しませんでした。今でいうところの鬱ゲー。どうあがいても、絶望。これはこれで人生について深く考えさせられたものです。

 今の私が読みたいのは、収束しない「運命の道」のような、いわば文学的ゲームブックです。『火吹山の魔法使いふたたび』も刊行された昨今、挑む人はいないものでしょうか。