核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

『機動武闘伝Gガンダム』に垣間見るポスト戦争

 もうちょい、昔のガンダム話を。一九九四~一九九五。ポスト冷戦下の作品です。

 これまでの宇宙世紀ものガンダムシリーズと異なり、地球連邦に相当する統一政府は存在しません。ネオアメリカとかネオロシアといった、二十世紀末の流れをくむ諸国家が、それぞれスペースコロニーに本拠を移した未来世紀。

 戦争ではなく、各国がそれぞれの最新技術で開発した「ガンダム」どうしの格闘技「ガンダムファイト」で覇権国家が決まります。ネオジャパン代表のファイター、ドモン・カッシュも、ファイトの舞台となる荒廃した地球に降り立ちます。シャイニングガンダムと、女性パートナーのレインと、ちぎれた写真と、秘めた使命とともに。

 これまでの、地球連邦と宇宙移民の終わりなき戦争を描いたガンダムシリーズとはかけ離れており、むしろ『キン肉マン』の物語文法に近い展開です。

 

 (以下ネタバレ)

 

・危機に瀕した時に目覚める境地、明鏡止水。

・熱い死闘を通して芽生える、かつての敵との友情。

・尊敬する師匠が敵に回り、やむなく戦う運命。

・冷静で的確な判断力で主人公を導く、生き別れた兄とおぼしき覆面ファイター。

 

 そして全人類共通の敵、デビルガンダムが現れます。ガンダムファイトを通して一つに結ばれた各国のファイターたちは、ドモンを先頭にデビルガンダムと戦い、ついに勝利をおさめるのでした。

 なんかシャンタル・ムフ氏に見せたら喜んじゃいそうな物語ではありますが、

 

・共通の巨大な敵がいる時のみ、人類は一体の友となれる。

 

 という結末はシュミット的でもあります。悪魔将軍を倒した後、キン肉マンら正義超人たちの友情にひびが入ったように、共通の敵を失った各国ガンダムたちは、これからも仲良くガンダムファイトを続けていけるのか?そういう、一抹の不安を抱かせる結末ではありました。いや、娯楽作品としては非常によく出来てるんですけどね。