核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

村井弦斎の絶対平和主義宣言

  今の世の文明を称するものは人類の暗黒な方面が進歩したものです。飛行機が天を翔り、潜航艇が海を潜るのも、戦争といふ殺人事業が進歩した事ではありませんか。(略)戦争の道具は百年前に比して幾百倍の進歩を称してゐますけれども、美術文藝音楽其他美に関した方面は百年前も同じ事です。
  村井弦斎 『小松嶋』(1917)
 (改造社 『現代日本文学全集 歴史・家庭小説集』(1928)より引用)
 
 第一次大戦下に書かれた、弦斎の最後の小説『小松嶋』の、そのまた結末部です。
 途中まではなんということもない口語体の家庭小説で、弦斎がすでに小説に興味を失ってるのがばればれなんですけど、最後でやってくれました。さすが。
  1900年代初頭にはテクノロジー国家主義国粋主義ではありませんし、天皇には無関心だったようです)の信奉者だった弦斎がなんでこうなったか。黒岩比佐子『食道楽の人 村井弦斎』をもってしてもいまだ解かれざる謎です。オラ、わくわくしてきたぞ。