核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

上山明博 『「うま味」を発見した男 小説・池田菊苗』 PHP研究所 2011・6

 図書館で発見した新刊です。冊数制限に引っかかって借りられなかったので、今回は報告のみとさせていただきます。
 うま味調味料の元祖といえば味の素(当ブログは宣伝目的ではありません。厳然たる歴史的事実です)。
 味の素といえば村井弦斎。味の素が開発された当時の明治の新聞を読むと、「食道楽の村井弦斎先生推薦」とか書かれた広告をしばしば目にします。で、弦斎関係の新事実が見つかるかもと思って読んだのですが・・・
 小説仕立てにしたせいか、歴史的にどうかと思われる記述がしばしば目につきます。研究者としては小説化よりドキュメンタリー形式にしてほしかったところです。
 個人的には、弦斎の笑い方は、「ハッハッハ」ではなく、「アハヽ」にしてほしかった。でもって、
 「実に野蛮だネ」
 「今の世の○道楽を改良しなければならん」
 のトリプルコンボを決めて欲しかったところです。
 
 「今の文学者の言論文章を読んでも多くは不平や怨嗟の声を発するのが文学者の本領と心得ている。(略)これは先ず今の病的文学を改良しなければならん」
 村井弦斎 『食道楽(下)』 岩波文庫 2005 初出1903(明治36)
 
 現実の悲惨さを訴えるよりも、実現可能な代案を提出して「改良」をめざすこと。よくも悪くもそれが村井弦斎の生き様なのです。