「〈正義〉とは友を利し敵を害することである」
その通説に対して、ソクラテスはこう反論します。
「正しい人間でも、たとえ相手が何者であるにせよ、人を害するということがありうるのだね(略)害された人間たちは、必ず、前よりも不正な人間とならなければならないはずだ(略)
したがって、ポレマルコスよ、相手が友であろうが誰であろうが、およそ人を害するということは、正しい人のすることではなくて、その反対の性格の人、すなわち不正の人のすることなのだ」
「悪いやつらは殺してしまえ」といった幼稚な「正義」は、ソクラテスの生き方ではありません。味方はもちろん、敵または悪人でさえも、害してはいけないのです。人を害すること自体が「正義」にそむくことであり、真の「正義」とは味方や善人のみならず、敵や悪人をも益する(大局的長期的な意味で)営みでなければならない・・・。
「何を甘っちょろいことを言ってやがる。利敵行為じゃねえか」
といった反論は当然考えられますし、現に1ページ後にそうなります。
次回は、「プラトン『国家』第1巻における「正義」の定義その2―トラさん乱入編」の予定です。ご期待ください。