核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

プラトン 『国家』 第1巻における「正義」の定義 その1

 「〈正義〉とは友を利し敵を害することである」
 カール・シュミットでもセカイ系ライトノベルでもありません。藤沢令夫訳『国家(上)』 岩波文庫36ページにある,
ポレマルコス(アテナイから約7キロの外港ペイライエウスの市民。訳注より)の言葉です。これはポレマルコスの私見にとどまらず、古代ギリシアにおける一般的な「正義」の定義でした。
 その通説に対して、ソクラテスはこう反論します。
 
 「正しい人間でも、たとえ相手が何者であるにせよ、人を害するということがありうるのだね(略)害された人間たちは、必ず、前よりも不正な人間とならなければならないはずだ(略)
 したがって、ポレマルコスよ、相手が友であろうが誰であろうが、およそ人を害するということは、正しい人のすることではなくて、その反対の性格の人、すなわち不正の人のすることなのだ」
 
 「悪いやつらは殺してしまえ」といった幼稚な「正義」は、ソクラテスの生き方ではありません。味方はもちろん、敵または悪人でさえも、害してはいけないのです。人を害すること自体が「正義」にそむくことであり、真の「正義」とは味方や善人のみならず、敵や悪人をも益する(大局的長期的な意味で)営みでなければならない・・・。
 「何を甘っちょろいことを言ってやがる。利敵行為じゃねえか」
 といった反論は当然考えられますし、現に1ページ後にそうなります。
 次回は、「プラトン『国家』第1巻における「正義」の定義その2―トラさん乱入編」の予定です。ご期待ください。