核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

碧川企救男 「文明史上より見たる日露戦争」

  『小樽新聞』1904(明治37)年3月4日~6日一面最上段連載。碧川企救男(署名は「碧川生」)の評論「文明史上より見たる日露戦争」を紹介します。
 「一個の老衰国と二個の瀕死国と二個の未知国」この五国の将来が、十九世紀が二十世紀に残した疑問だという趣旨です。具体的に要約すると、
 
 老衰国 支那(清) 諸外国の侵食により、もはや不治の病に冒されている。「老衰は明らかなる事実のみ」
 瀕死国 土耳古(トルコ) 露西亜との抗争で弱り、「支那よりも速に死すべきもの」
       朝鮮 「既に死に瀕せり」「今後半世紀を出でざるべきなり」
 未知国 北米合衆国 「青年国」「生産力の富裕」「二十世紀の文明史を飾る花」
       露西亜(ろしあ) 広大な領土と豊富な資源を有するが、「バルカンに虐殺を行ひアムールに無辜の人民を殺す」人道上の問題や、「腹心の虫と称される虚無党」の暗殺活動、フランス頼みの経済など問題多数。二十世紀の未来は、露西亜の青年にかかっている。
 
 となります。
 副題に「第一 十九世紀が残せる疑問」とあり、第二以降も予定していたようですが、連載3回目の末尾に(此項完)とあり、どうやら打ち切られたようです。
 
 現状分析にとどまり、著者の主張が充分に発揮されていないのが惜しまれるところです。ロシアの将来について語ると、どうしても社会主義トルストイの平和主義にふれざるを得ないための打ち切りと思われます。