単行本刊行は1897(明治30)年となっていますが、日清戦争期の『都新聞』紙上に『朝鮮征伐』の題で連載されたものの改題です。
日清戦争に便乗した際物めいてはいますが、人物造形や筋立ては『朝日桜』や『日の出島』よりもしっかりしています。まあ史実を忠実に追っていけば、日本軍が連戦連勝する話にはなりようもないわけで。
合戦で一門を失った玉蘭は尼になり、夫や息子との再会をも拒みます。「合戦済んで両国親しみを結びなば必ず日本の地に迎へ申さん」と、仲介に立った竜造寺義秋の好意もむなしく、秀吉の急死によって役は終わり、玉蘭との再会は果たされないまま物語は終わります。
戦争の悲劇性を扱った作品ではあるものの、特に反戦要素はなく、弦斎らしいSF的展開もありませんでした。弦斎が平和主義に目覚めるのはだいぶ先のことです。
追記 この作品に言及した博士論文がすでに存在しました。
ひとまず書誌情報のみコピーしておきます。本文は後日必ず読みます。
『明治文学に描かれた朝鮮 : 明治20年代の「朝鮮関連小説」を中心に』 | |
その他のタイトル: | Chosen in Meiji Literature : Focusing on Chosen-related novels of the twenties Meiji period |
著者: | 權, 美敬 ゴン, ミギョン |