核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

村井弦斎『日の出島』「東雲の巻」 その3 「低温度」

 村井弦斎の科学知識もけっこう怪しいのですが、私の方もそれに劣らずでして。
 以下の記述は、あくまでも明治30年代のSFということでご理解ください。つっこみをいれるだけの能力は私にはありません。
 これまでの工業技術は高温で蒸気や電気を起こしてきたが、それと反対の発明を心掛けている人がいる、という話です。
 
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 既に今でも空気を液体にしたり、或は瓦斯(がす)を液体にするのは低温度を用ゆるけれどもまだその方法が軽便に出来ぬから所謂る学術界の仕事で工業界の仕事にならん、然しその方法さへ研究し得れば利用の範囲は広大なるので
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 …空気を液体にしておいて高山や風船(飛行船?)で使用するとか、鉄でも銅でもあらゆる金属が低温度で自由になるとか、文吉氏の構想は広がります。低温物理学の利用範囲は広大です。
 ただ、「摂氏の零度以下二百七十三度を絶対零度と云ふがその絶対零度以下三千度四千度の低温度を以て」なんてのを見ると、やや不安が…。
 リンデによる空気の液化は1895(明治28)年、デュワーによる水素の液化は1898(明治31)年。そしてこの「東雲の巻」連載開始は1900(明治33)年6月。
 いつもながら当時の先端を行く話題です。