核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

伊東光晴『人類の知的遺産 70 ケインズ』講談社 1983

 ケインズの管理通貨制度論について。

   ※
 ケインズの経済学は、経済社会を自由に任せることから、人間の知性によってコントロールする社会へと移行させようとした。そのためには金本位制度否定が前面に出た。自由主義の経済、それは十九世紀のそれがそうであるように、決して完全に自由であったわけではない。その基軸には金本位制度なるものがあり、貨幣としての金の供給の伸び率の中に経済の伸びを制約していったと言っていいであろう。(略)
 だが二十世紀の三0年代の現実は、潜在的な物的生産性は大きく、貨幣供給の伸びがこれに追いつかない。そこでこの潜在的生産能力に即応するように、貨幣供給を人為的に増やしてやる必要がある。
 自然物である金の生産の伸びによって経済をコントロールする時代から、知性によるコントロールに変わりだしてもよいのではないか。これがケインズの考えであった。
 (26ページ)
   ※

 240ページにも「ケインズは、このような不況に対処するために、金本位制度にかわり、管理通貨制度を提起し」との、同趣旨の記述がありました。
 ただ、これは文中にもあるように1930年代の不況対策の話なので、短絡的に沼倉ケインズ説にもっていくのは無理なようです。1918年の段階での管理通貨制度論をもう少し調べてみます。