核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

王琪穎「福地源一郎の東邦論: 『東京日日新聞』の社説における露土戦争」

 明治時代にも日本の戦争に反対する人々がいたことは、当ブログおよび論文で再三述べてきました。
 では、日本以外の国同士の戦争、たとえばロシアとトルコの戦争に反対した例はあったのか。その数少ない例を取り上げたのが、王琪穎氏の論文「福地源一郎の東邦論: 『東京日日新聞』の社説における露土戦争」(アジア地域文化研究 (13), 1-24, 2016)です。
 福地は江華島事件の時にも(つまり、日本が一方の当事者の時も)、国民の幸福のために非戦論を主張していましたが、日本が直接関わらない露土戦争にも反対し、ヨーロッパ諸国の自称「文明世界」ぶりを批判しました。国際的な視野をもった非戦論者というべきでしょう。
 ただ福地の残念なところは、生涯を通して非戦論を貫けず、日清戦争の勝利をたたえる歌舞伎なんかを書いたりもしています(王論文は社説限定なので言及なし)。複雑な人というか、自国の戦争を批判するほうがむずかしいのか。