核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

開高健『紙の中の戦争』岩波書店(同時代ライブラリー) 一九九六 その2

 クラウゼヴィッツを読むのに手間取っているので、開高著からの引用をもう一つ。

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 ただ残念なのは将軍その人、戦場、兵の発狂、作品を構成するイメージのうちで重要な役を果たさねばならないそれらのものがすべて美しい造花でしかないために虚無が閃光を生んでいないことである。
 (上掲書四五ページ)
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 危うく同感しそうになりました。スタンダールにしろ『乃木大将陣中珍談』にしろ、芥川にとっては借り物のイメージや箴言を寄せ集めたにすぎず、芥川自身の熱烈な何か(例えば反戦の意志)が欠けているのです。武者小路実篤の『ある青年の夢』と比べてさえも。
 しかし、決めた以上は論文は書かねばなりません。芥川は嫌いになっても、「将軍」は嫌いにならない、の精神で。