核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

チキンホーク列伝

 自らは徴兵逃れをしていながら、自分が安全になった後年に好戦主義者となった実例を三名。
 博士論文第七章より転載。

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  ヒトラーは申告、登録しなかっただけでなく、一九一〇年も一一年も一二年も検査をうけなかった(略)彼は二重の罪に問われることになった。兵役忌避者としての罪と、そのうえに罪を逃れるために外国に脱走した罪と。
 村瀬興雄『ヒトラー―ナチズムの誕生』誠文堂 一九六二

 一九〇四年四月、期限切れ旅券の偽造容疑で、ジュネーブの警察に逮捕されたときは大変であった。この時イタリアの警察に身柄を引き渡された場合、スイス滞在で兵役を逃れていたから、兵役忌避で懲役に処せられることになっていた。(略)この時ムッソリーニ救出のために特に尽力したのはティチノ州の弁護士ジュゼッペ・レンチであった。
 ロマノ・ヴルピッタ『ムッソリーニ―一イタリア人の物語』中公叢書 二〇〇〇

 一九六八年の春、ジュニア(引用者注 ジョージ・ウォーカー・ブッシュ。第41代ではなく第43代のアメリカ大統領)は歴史学で単位を得てエール大学を卒業した。(略)「ヴェトナムで一兵卒として歩兵隊に入ることはしない」と決意したジュニアは、「飛行機の操縦を習おう」と思い、アメリカがヴェトナムで戦っていた時期に、テキサス州空軍に入隊することで兵役の義務を果たすことを選んだのだ。(略)後にブッシュは、自らのことを三人称でこう語った。
「ええ、たしかに彼が歩兵になるのを避けようとしたと言えないことはないだろうが、私としてはパイロットになる機会があったら絶対になろうと思っていたから……」
 J・H・ハートフィールド『幸運なる二世 ジョージ・ブッシュの真実』二宮千寿子他訳 青山出版社 二〇〇一
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 ……誰だって、二等兵として戦場に駆り出されるのは嫌なのです。
 問題はそこからです。軍隊や戦争そのものをなくすために努力する平和主義者になるか、上にあげたようなチキンホークになるか。