核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

グリゼルダ・ポロック『視線と差異 フェミニズムで読む美術史』新水社 一九九八

 はたして水平目線はレンブラント肖像画以降に特有と言い切っていいものか。気になったので、そのへんを扱ってそうな本を読んでみました。「第二章 視線、声、権力」という魅力的な題の章で。

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 芸術と社会に関するマルクス主義的見方には、回避すべき諸要素があるのも確かである。マルクス主義の伝統に沿う「芸術の社会史」にモデルを求めるなら、フェミニスト美術史はその誤りをくりかえさないように用心しなければならない。
 (五〇~五一ページ)
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 として、マルクス主義の反映理論への疑義を呈しています。そしてその「過剰な一般化」の例として、

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 ダヴィッド、レンブラントといった画家がつくりだすものは、ある特定の階級、ないしは階級内のさらに小さな社会集団や派閥の視覚的イデオロギーの具現化(たとえば、アンシャン・レジーム末期における新興ブルジョワジーの芸術、といったように)と読むことができる。
 (五二ページ)
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 とレンブラントの名前が出てきます。とはいえ、著者さえ懐疑的なマルクス主義の反映理論を、マルクス主義者でもない私が「「将軍」に出てくるレムブラントは新興ブルジョワジー的芸術で」なんてやる必要はまったくないので、留保ということにします。もう少し、レンブラントについての実証的な研究を読んでからということで。