核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

遅塚麗水 「電話機」

 189X年(明治23+X年)。電話機が民間レベルで普及した時代の日本。
 ある未亡人のもとに、死んだばかりの婚約者からの電話がかかってきます。
 それを皮切りに、間違い電話、いたずら電話、密告電話、無言電話、脅迫電話、警視庁上層部による組織ぐるみの盗聴、電話の匿名性を利用する詐欺などの、怪しい電話が社会をパニックに陥れる物語が短いストーリーの積み重ねで描かれていきます(「世にも奇妙な物語」みたいな感じです)。
(2016・12・16追記 「盗聴」は誤りで、単なる警察への電話でした。訂正してお詫びします)
 電話回線網の背後に見え隠れする邪悪な意思は何者なのか、はたまた電話機そのものなのか。
 
                       ☆
 
 明治の作家、遅塚麗水(ちづかれいすい)の作品、「電話機」(郵便報知新聞連載 1890(明治23)9月13日~10月8日)のあらすじです。実際の電話サービス開始(同年12月16日)よりも前に書かれた、近未来シミュレーション小説です。
 残念なことに、この作品は当時も今も単行本化されておらず、本屋さんやネットでの入手は不可能です。
 どうしても続きが読みた~い、という方は、Webcat等で「復刻版 郵便報知新聞」が置いてある図書館をお探しください。
 とりあえず結末だけでも知りた~い、という方は、雑誌「日本文学」2006年6月号収録の、「遅塚麗水『電話機』論―明治新聞小説におけるテクノロジーへの警告についての一考察」をごらんください。こちらは一般の図書館にもたいてい置いてあります。小説における平和主義の可能性という観点から、「電話機」を分析しております(宣伝。ネタバレご注意)。
 その後の麗水についてですが、ライバル社の都新聞に移籍して紀行文家に転じてしまい、二度と「電話機」のようなSF小説を書くことはありませんでした。残念。
 「ふっ、しょせん麗水などわが報知四天王の中では一番の小物よ。
 いでよ、「匿名投書」の村井弦斎!」
 と社長の矢野龍渓は言ったとか、言わなかったとか。