核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

大江健三郎 「『運動』のカテゴリー―小林秀雄」

 大江健三郎 「『運動』のカテゴリー―小林秀雄」(初出『新潮』1983年6月号(未見)。ここでの引用は、講談社文芸文庫『最後の小説』による)に、こうあります。
 
 「小林氏は、―あれ(引用者注、『同時代ゲーム』)は二十ページで閉口したよ。きみは(小説に対する考え方と、これは僕の補足で、あるいは人生に対する態度が、といわれたのかもしれないが)甘いのじゃないかい?といわれた」
 
 一方、6月7日の記事に引用しましたように、大江健三郎 『同時代ゲーム』(新潮社 1979)について、「日本を代表する批評家と呼ばれる」小林秀雄は以下のような評価をしたと、大江自身が書いています。
 
 「(略)小林秀雄氏によって直接声をかけられたのだ。決してまったく好意的でなかったとも思わないが、―あのような小説が批評家に受け入れられると思っているのか?それならきみはノンキ坊主だ、おれは二ページでやめたよ!」
 「大江健三郎小説 5 月報」 1996年10月
 
 はたして小林秀雄が読んだのは、2ページまでか20ページまでなのか。どうでもいいといえばどうでもいい話なのですが、この挿話そのものの信憑性が怪しくなったことは確かです。
 この 「『運動』のカテゴリー―小林秀雄」なる追悼文全体について言えることですが、とにかく情報量に乏しい文章です。小林秀雄の精神構造というのは本当に強い感染性があるようです。この一文に関する限り、大江健三郎小林秀雄の魂を立派に受け継いでいます。
 ・・・私は、遠慮しておきますw