「(略)小林秀雄氏によって直接声をかけられたのだ。決してまったく好意的でなかったとも思わないが、―あのような小説が批評家に受け入れられると思っているのか?それならきみはノンキ坊主だ、おれは二ページでやめたよ!」
「大江健三郎小説 5 月報」 1996年10月
…この件に関する限り、小林秀雄の気持ちもわからないではありません。
四国の森の村で生まれ、現在はメキシコに在住している神話と歴史の専門家(今回は大江健三郎の分身ではなく、父=神主の息子という設定です)が、双子の妹にあてて、故郷の「村=国家=小宇宙」の伝承を書きつづるという内容なのですが、話がやたらあっちへ飛びこっちへ飛びする上に、「村=(略)」の創始者「壊す人」(原文ではここだけ太字)の物語というのがやたらグロテスクリアリズム…いやリアリズムじゃないグロテスクでして、読んでて楽しくなるものではないのは確かです。まあ、私はこの機会に最後まで読み直しましたが。
(2022・10・14追記 ちょっと下品な発言だったので一行削除しました)
ただ、小林秀雄は「○○ページまで読んでもう××と感じた」批評の常習犯でして、そのために人類は危機に墜ちいったりしています。くわしくは2011年7月3日の学会発表にて報告しますので、しばしお待ちください。