核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

クリティアス断片集

 先日ご紹介した、古代アテナイ無神論者クリティアスの著作は、現在では一冊も残ってないのですが、他の著者に引用された断片は結構残っているようです。おなじみバルバロイ様(http://web.kyoto-inet.or.jp/people/tiakio/sophists/krt1.html)より、クリティアスに関する記述をいくつか引用します。かっこ内は引用者。
 
 ピロストラトスソフィスト伝』I 16
 ソフィストのクリティアスについていえば、彼はたしかにアテナイ人たちの民主制を解体したにしても、それだけではまだ彼が悪人ということにはならなかったであろう。
 (略)しかしながら、彼は公然たるラコニア贔屓であるばかりか、聖域を引き渡し、(略)残忍さと血の汚れの点では「三十人」を凌駕するとともに、ラケダイモン人たちを助けて、ばかげた決議に加担し、かくて、アッティカの地は人群の絶えた荒蕪地となったのであるからして、悪徳にかけては名のある者ども全体の中でも、極悪人であるように私には見える。
 (略) しかし、言葉の分野についていえば、クリティアスは博識な思想作家であるばかりか、荘重な語り口にかけてこの上なく充分な者であった。
 (「ラコニア」「ラケダイモン」とはアテナイの敵国スパルタの、「三十人」とはクリティアス政権の別名です)
 
 ディオゲネス・ライエルティウス『哲学者列伝』III 1
 プラトンは、アリストンとペリクティオネ(あるいはポトネ)――彼の家系はソロンにまでさかのぼる――との子で、アテナイ人である。すなわち、この人〔ソロン〕の兄弟がドロピデスで、この人の子がクリティアスで、この人の子がカライスクロスで、この人の子が、「三十人」の一人クリティアスとグラウコンで、この人〔グラウコン〕の子がカルミデスとペリクティオネで、この女性とアリストンとの子がプラトンで、〔プラトンは〕ソロンから数えて6代目にあたる。
 (つまり、クリティアスの姪の子があのプラトンなのです)
 
 クセノポンソクラテスの思い出』I 2
[12]
 しかるに告発者が言うのは、ソクラテスとの交友者であったクリティアスとアルキビアデスとは、国家に最多の害悪を為したということであった。すなわち、クリティアスの方は、寡頭制時代のあらゆる人たちの中で名うての盗人であり、暴行魔であり、最も残虐な者となったのであり、アルキビアデスの方は、逆に民主制時代のあらゆる人たちの中で最高の放埒であり、暴慢者であり、暴行魔だったのである。
 (ひどい言われようだなおいw。片割れのアルキビアデスもいずれ紹介します)
 
 偽ディオニュシオス『弁論術』6II 277,10 Us.-Rad.
 すなわち、カライスクロスの子で「三十人」の一人によれば、生まれ来たった人間にとっては、「生まれきた以上は死んでゆかねばならず、生きているかぎりは、応報から逃れることをえないということ以外に、確実なことは何もない……」。
 (なんかニヒルだな。無神論者だけど因果応報は信じてるんだね)
 
 ・・・実在の人物でさえなければ、魅力的な悪役なんですけどね。TRPGに使いたいぐらいです。