核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

オーウェル 『1984年』 ハヤカワ文庫NV 1972(原著1949)

 あらかじめ言っておきますが、読んで楽しくなる小説では決してありません。気が滅入ってもいいという覚悟のある方のみお読みください。新しい翻訳も出ているようですが、とりあえず今回の引用は手元にある1972年訳によります。
 時は1984年4月(書かれた時代からすれば未来)のロンドン。ここオセアニア国は「偉大な兄弟」(ビッグ・ブラザー)と呼ばれる指導者に統治されています。街のいたるところに死角なく「偉大な兄弟があなたを見守っている」と書かれた肖像画が貼られ、国民はテレスクリーン(双方向テレビ)によって生活のほぼすべてを監視と盗聴にさらされています。
 主人公ウィンストンは「真理省」なる官庁で、新聞や雑誌の改竄(かいざん)作業に従事しています。
 「偉大な兄弟」の間違いだらけの政策の演説を、「現実に起こった通りのことを予言したように手直し」(53ページ)する仕事。実在の人物を抹消し、架空の英雄を捏造(ねつぞう)し、実現するはずもなかった誇大な生産目標をなかったことにし・・・
 そんな日々に疑問を感じるウィンストン。彼は1973年に、ある重大な発見をしていたのです。反逆罪で処刑された三人の大政治家が、実は無罪であったという決定的な証拠となる新聞記事。
 
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 党は眼と耳で得た証拠を拒否するように命じた。それは党の究極的な、最も基本的な命令であった。(略)にもかかわらず、自分の方が正しいのだ!党こそ間違っていて自分の方が正しいのである。この明白なこと、馬鹿げたことを、真実と共に守らなければならないのだ。(104ページ)
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 こうして心ひそかに「偉大な兄弟」打倒を誓ったウィンストン。そこから先は長い上に、くわしく書くにしのびないので、またいずれ。
 私が「新聞」を研究対象に選ぶきっかけとなった作品です。日本をオセアニア国にしないためにも、来週にはまた国会図書館に行くつもりです。