核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

マッハ著 廣松渉訳 『認識の分析』 創文社 1966(昭和41)

 超音速およびジェットの先駆的研究者(訳者序文より)、エルンスト・マッハの著書を紹介します……と言いたいところですが、今回の調査ではマッハの理論自体を読み込むには至らなかったため、アインシュタインへの影響についてだけ報告するにとどめます。たしか『世界の名著』シリーズにもマッハの文章は収録されてたはずなので、続きはまたの機会に。
 
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 マッハの物理学上の理論、わけても彼の時間空間論が「相対性理論に対して直接の先駆をなした」ことは多くの人々が指摘するところであり、アインシュタイン本人もその旨を認めている。
 (略。ライスの直接影響説と、カッシラーの「マッハの物理学と哲学は区別すべき」説を紹介した後)
 しかし、アインシュタイン自身「私の仕事にとってマッハとヒュームの研究が非常なたすけになった。マッハは古典力学の弱点を認め、半世紀も前に一般相対性理論を求めるにあと一歩のところまできていた。……マッハがまだ若く彼の頭脳が柔軟だった時期に、物理学者たちのあいだで光速の一定性ということが問題にされているようであったら、マッハこそが相対性理論を発見したであろう……」(Nachruf auf Mach.Physikalische Zeitschrift XVII, 1916,S. 102)と述べ、折にふれてマッハの「認識論が役に立った」という述懐をもらしている。(Cf. Autobiographical Notes, A. Einstein. ed. by P.A.Schilpp, 1959,p.21 etc.)
 
 「訳者附録 マッハの哲学と相対性理論ニュートン物理学に対する批判に即して―」136~137ページ
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 具体的にどう役に立ったかは、私の理解力を超えるので割愛させていただきます。ただ、レーニン小林秀雄が罵倒したマッハなる人物を、アインシュタインが高く評価していたこと、これだけは明らかにできたと思います。
 それほどの人であるにも関わらず、レーニンなんかに憎まれたばっかりに、文献がとぼしいのは惜しまれます。『情況』2003年5月号、「特集 マッハとレーニン」の編集後記にあった、「マッハの研究はどうなっているのか。日本ではレーニン主義という名のスターリン主義の下で抹殺されたようだ」という一節が印象に残ります。