核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

スピノザ『国家論』(畠中尚志訳 岩波文庫 1976 原著1677) 予告

 だいぶ前に買った本ですが、ふと読み返す気になりまして。
 まず今回ははじめのほうの気になったとこだけにします。スピノザホッブズと同じく、「人間は、本性上互いに敵である」と想定しており、その前提にたって個人の自衛権や、自衛のための戦争を国家が行う権利を認めています。が。
 
   ※
  戦争を行うには甲国家にとってはただその意志を持ちさえすれば十分だからである。これに反して甲国家は、平和に関しては、乙国家の意志がそれに合致しなければ何事も定めえない。これから帰結されるのは、戦争の権利は各国家に属するが平和に関する権利は一国家にではなくて少なくとも二国家に属するということである。
 (上掲書 第三章第一三節 46ページ)
   ※
 
 ・・・「ひとりでけんかはできない」とも言いますが、一国の意志だけで平和は樹立できない、というのがスピノザの意見のようです。相手国も所詮は自分のことしか考えていない、と割り切った上で、いかに相手国に「恐怖または希望」を抱かせ続けるかが、盟約を長続きさせる秘訣。
 そこから先はまだ熟読していないのですが、スピノザエラスムスデカルトよりもむしろマキャベリに近い、シニカルな平和観の持ち主のようです。ただ、今ちらっと見えた、
 「平和とは戦争の欠如ではなくて、精神の力から生じる徳だからである」(第五章第四節 59ページ)
 の一節には、ちょっと期待が持てそうです。
 
 (追記 確認したところ原著刊行は1677年でした)