核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

村井弦斎 『日の出島』「蓬莱の巻」その1 登場人物紹介

 令嬢「それだから蚊が一匹も来ないと云ふ様な工夫を仕たら嘸(さ)ぞ人の為めになるだらう(略)小さな薬の玉でも下げて置くと十間四方へ蚊が来ないと云ふ様なものは無いか知らん」

 ・・・村井弦斎の描く「明治のお嬢様」はどこか変わった人ばかりなのですが、この大長編『日の出島』も巻頭からこれです。
 この発明好きの令嬢が、親譲りの財産を「人の為め」に生かすべく、豪邸を引き払って、変人ばかりの東京の安下宿に引っ越して来るわけです。
 『キテレツ大百科』と『めぞん一刻』を混ぜたような感じでしょうか。
 大長編にはよくあることですが、この巻ではまだ各登場人物の個性が固まっておらず、後の巻を先に読んでしまった私からすると意外の感があります。
 以下の登場人物紹介も、すべて「覚醒イベント前」「フラグ立て前」の状態としてお読みください。

 
 宝田 お富 前述の通りの発明マニア。いろいろと世間知らず。
 小曽木野小路 馨 下宿人の一人。お富嬢に憧れる純情勤労少年。
 雲岳女史(うんがくじょし) 下宿女学生コンビの「肥った方」。二人称が「君」で「○○したまえ」口調で喋る。しかし、完全体にはまだ遠い。
 細烟女史(さいえんじょし) 下宿女学生コンビの「痩せた方」。
 石橋 亘(いしばしわたる) 理学士。名前の通りの堅物。蛍光研究家。
 石橋 お金(いしばし おきん) 理学士の妻。ふつつか者。覚醒前。

 なお、本編の売りである発明の方も、(弦斎が読者に遠慮したのか)まだ控えめで、「熱量を最小限にした照明」が出てくる程度です。分量的には3分の2あたりで、劇中劇「日の出山」に入るので、今日はこのへんで。