雲岳女史が台湾で探検隊ごっこにはげんでいる間に、内地では太陽燈に続いて、太陽熱エネルギーが実用化されていました。
「太陽の温熱を自由に吸収放散し得る」発明。明治近未来SFの本領です。
※
「太陽熱と云ふものは炭や薪の代りをして大層重宝なものだってネー、此頃は各処へ大きな煙突が出来て妾(わたし)達は車で歩くとよくあの煙突から黒い煤が飛んで来るのでなけなしの衣服を汚される事もあるし、夏なんぞは白地の物を戸外へ干して置くとあの煤で真黒にされるから皆なこぼして居たけれどもモーあの太陽熱が出来れば石炭が要らなくつて黒い煤も出ないんだつて」
(近代デジタルライブラリー 『日の出島』「老松の巻」3/165)
※
…後半部分、石炭の害についての記述はけっこう切実です。植民地政策を自賛するような「新高の巻」を書いたかと思えば、エネルギーと環境の問題まで考えていたとは。弦斎という人の奥深さです。