『三十年後』のあらすじ紹介は今回で終わりです。
不満分子の内乱を犠牲者なしで鎮定した名声により、嶋浦太郎は世界大学校の校長に就任します。独(ドイツ)・墺(オーストリア)・土(トルコ)・勃(ブルガリア)つまり旧同盟国側の留学生は、世界大戦から三十年後でも連合国側とわだかまりがあり、服薬や注射で強引に仲直りさせています。
花枝嬢との結婚話も持ち込まれましたが、嶋浦は「や、実は」此頃考えている計画を実行した上でなければと先送りします。この「や」が星新一風。
その計画とは、この理想社会を築き上げた世界的大発明者、平和の神を訪問することでした。
例によって日本式反重力飛行機に乗り、昇るわ昇るわ。
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星?星の世界?
眼を開いて見ると、ニツコリ笑つて其所に立つ大偉人!
『おう、嶋浦君!」と云つて握手をした。
『あツ、大発明家は君であつたか』
翁の能(よ)く知つてゐる人であつた。
三十年後 終
(近代デジタルライブラリー 星一『三十年後』 134/138)
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「星製薬」が聖跡扱いされている話は冒頭で出ているので、奇想天外な結末というわけでもありませんが。いろんな意味で「星の世界」だったわけですね。