核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

夏目漱石『明暗』再読

 ババぬきを真剣に実況中継し続ける小説。あるいは麻雀かポーカーか。

 決して、漱石最後のこの未完長編をけなしているわけではありません。初めて読んだ二十代の頃と同様、『明暗』は世界に類例の少ない名作だと思っています。心理を描いた小説ならいくつもありますが、『明暗』が描いているのは「心理戦」です。

 『明暗』がババぬきだとすると、やりとりされるカードは何なのか。ぱっと見には金銭がそれに見えますが、登場人物たちにとってそれ以上に重要なのは「承認欲求」なんじゃないかと思います。