大杉栄や伊藤野枝の魂が二〇一〇年の現代人やアイドルに宿るという物語。現代小説とはいってももう一二年も前ですが、気になっていながら今まで未読でした。
そもそも内藤千珠子氏の学会発表でこの作品を知ったのですが、同氏は発表および論文「大逆事件と百年後の小説ー瀬戸内寂聴「風景」を中心にー」(『大妻国文』二〇一一年三月)で、「反動的」「天皇制への反逆というスキャンダルが不可視にされる」と批判なさっています。
そういえば瀬戸内寂聴。『美は乱調にあり』『諧調は偽りなり』の二長編で大杉・伊藤を扱っています。現代における伊藤野枝の受容を扱いだすときりがないし、「火つけ彦七」で反差別論をやりたいという私の趣旨からも遠ざかるのですが、押さえるべきは押さえておかねば。