永峰著の正式な書名は、
永峰重敏『〈読書国民〉の誕生 明治30年代の活字メディアと読書文化』
(日本エディタースクール出版部 二〇〇四)
です。日課の「弦斎」を含む語のネット検索で読めました。私のストライクゾーンなのに、これまで上掲書を読んでなかった怠慢をお詫びします。
以下に引用する記事の出典は第一章注(18)によれば、それぞれ、
『文庫』明治三二年一一月、同誌明治三十三年一月、同誌明治三一年十月
の、「地方の読書界」と題する読者投稿欄とのことです。
※
和歌山「小説類では両書店で尤もよく売れるのは、弦斎、浪六、紅葉、露伴、鏡花、柳浪等であると云ふことだ」
福岡「弦斎浪六が第一、第二は紅葉です、其の次が露伴。柳浪、宙外、天外、風葉、などのも能く売れます。鏡花のは人が好みません」
柏原「小説家の受ける順序は、弦斎、涙香、桜痴、霞亭、水蔭、漣、笠園、南翠、仰天子、麗水と、かうです。悲しいこと(?)には、紅葉、露伴などは、如何もからいけませんですな」
(上掲書11頁)
※
やはり弦斎は一番人気だなとか、福地桜痴や遅塚麗水もがんばってるとか、そういう話をしたいわけではなく。
三つの地域名に注目しました。もしかしたら、一八八八(明治二一)から一八八九(明治二二)の時期に、弦斎が「二三の地方紙」に小説を載せていたという地域とかぶるのではないかと。
一応、永峰著のすぐ後を読みますと、「東京大阪出版資本の地方進出」について論じられており、弦斎がこれらの地方の新聞に何か書いていたという直接の証拠にはなりません。時期的にも一〇年ほどずれがあります。
しかし、弦斎が連載していたという地方紙の手がかりさえ見付からなかった私にとっては、光明を見た思いです。からぶりを覚悟の上で、これらの地方の新聞を調査してみる価値はあるかも知れません。