核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

ケインズ、平和主義を語る

 ケインズの講演「私は自由党員か」(一九二五)の一節。

 

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 平和問題については、極力、平和主義者たることにしよう。大英帝国にかんしては、私は、インドを別とすれば、重要問題はないと思う。インド以外のイギリス領各地域では、統治権の問題にかんするかぎり、友好的な分離の過程が、現在のところほとんど完了している-これはすべての地域にとって多大の利益となろう。しかし、平和主義と軍備にかんしては、われわれはようやく端緒についたというにすぎない。過去、われわれは戦争のために危険を冒してきたが、それとまったく同じように、私は平和のために危険を冒してみたい。しかし私は、このような危険が、多様な仮想上の状況の下に戦争を始めるというような企ての形態をとることを、望んでいるのではない。私は条約〔という形〕には反対である。武装解除されたドイツを、十分な軍事力を備えたフランスの攻撃から守るために、イギリスの全軍を投入するという言質を与えるなどということは、馬鹿げたことである。また、西ヨーロッパで将来起こるすべての戦争にイギリスが参戦するというのも、不必要な想定である。しかし私は、調停と軍縮の方向に向かって、たとえ弱小国と化すという危険を冒しても、きわめて優れた模範を示すことに賛成したい。

 『説得論集 (ケインズ全集第9巻)』(宮崎義一訳 東洋経済新報社 昭和五六 三六二頁)

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 小英国主義、とでもいうのでしょうか。各地のイギリス領の独立と軍縮が、ケインズのめざす「平和主義」のようです。石橋湛山を連想させます。

 とはいえ、第二次世界大戦勃発後には、ケインズは「戦費調達論」なんてのも書いてて、必ずしも一貫した平和主義者ではありませんでした。平和な時代の平和主義者、戦争の時代の軍国主義者というところでしょうか。