核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

小谷野先生。円本にプロレタリア文学は入っています

 
 上記ブログ「猫を償うに猫をもってせよ」で展開中の、大衆文学をめぐる論争につきまして。
 
 私は昭和期大衆文学は情報不足なので、議論に参加する資格があるかどうかわからないのですが、とりあえず事実関係をはっきりさせておきたいと思います。
 
 同ブログ2011年5月14日に掲載された改造社現代日本文学全集』(全63篇です)の目録および、「円本にも、プロ文学は入っていない」という記述は不正確です。
 上記目録では、第34篇~第40篇、第49篇~第53篇、第61篇~第62篇、第63篇(別巻)が脱落しています。
 第62篇(刊行順序52)はまるごと『プロレタリア文学集』にあてられていますし、第39篇(刊行順序46)は『社会文学集』です。
 高島健一郎「文学者の価値を作るもの―改造社版『現代日本文学全集』と石川啄木」( 「名古屋近代文学研究」21号 2004年)の74ページに、より正確な目録(刊行順序・発行日つき)があります。
 ネット上では、国会図書館の蔵書検索などでも、『プロレタリア文学集』の存在を確認できます。
 『社会文学集』は私も所蔵しておりまして、中江兆民・酒井雄三郎・矢野龍渓安部磯雄幸徳秋水堺利彦・木下尚江・大杉栄が収録されています(1930(昭和5)年9月20日刊行)。
 なお、同じく上記ブログのリストになかった、第34篇『歴史・家庭小説集』には塚原渋柿園村上浪六・中村春雨・村井弦斎も収録されています(1928(昭和3)年6月1日刊行)。しつこいようですが村井弦「斎」です。
 第62篇『プロレタリア文学集』は所蔵していないのですが、「昭和6年初版 629頁 収録作家は、林房雄小林多喜二武田麟太郎、藤澤恒夫、村山知義中野重治貴司山治、徳永直、落合三郎」だそうです。
 アマゾンドットコム
 の出品リストより。なお、私は出品者ではありません。
 
 なお、鈴木先生とは一面識がありますし、小谷野先生とは先日よそさまのブログでごあいさつしたばかりですが、私は党派に加担する気はありません。
 まず事実を明らかにしないことには実りある論争は成立しないし、学問上の問題については師や学派に遠慮すべきではない、というのが私の信念なのです。
 
 2011・5・15 12:30  菅原 健史