低迷しきった明治40年の小説界に、世界平和論を高らかに宣言した矢野龍渓最後の小説!
ここであらためて取り上げるのは、最近読み返してみて、「気概」および、それと隣接する概念「誇り」についての記述をここに再発見したからです。以下、引用。
「誇りの心は総ての人の生命である、如何なる人と雖も、其心に何か恃む所の無い者はない、(略)自身の有様に於ては、絶て何等の誇るべきことなき者すら、尚ほ誇りの種子がある、其の祖先を以て誇とする、〈略)其の容色を誇り、其の父兄の地位を誇り、其の夫の材略を誇り、人品を誇り、我が衣装を誇り」(二 朝桜)
「決闘を申込まれたに対して、此方からあやまりに行くとは、余んまり気概がないじやア無いか」(三十 絶交)