核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

2014-07-01から1ヶ月間の記事一覧

太い矢印

私は、文学研究とは太い直線の矢印であるべきだと思っています。 作者の描いた線をただなぞるのではなく、自分が誘導したい方向に向きを曲げるのでもなく。 作者が小説を書き終えた、ぎりぎりの地点を始点とする矢印。 次の始点はここです。 「誰の思想も大…

「犯人ってやつは独創的な芸術家だ。探偵はただ批評家であるのみだ」

チェスタートンの短編推理小説で、シリーズものの第一作「青玉の十字架」中の、検察官ヴァランタンの独白です(直木三十五訳、青空文庫より)。 その伝でいくと、文学研究者ってのはどのへんでしょうか。ワトソン役か、鑑識か、被害者か。

江見水蔭『三千年前』(1917(大正6)年)

『三十年後』とまぎらわしい題ですが、刊行はその一年前。 多摩川沿いの貝塚を探索していた「文壇の落伍者」を自任する小説家が、先住民族コロボックルの興亡に思いをはせた、「石器時代の科学的小説」です。 小金井博士(小金井良精。後に星一の舅、星新一…

エカテリナ ゴドワロワ「星一『三十年後』論」(予告)

さっそく先行研究が見つかりました。書誌情報は以下に。 ※ エカテリナ ゴドワロワ「星一『三十年後』論--優生思想家が夢見た<理想的>な社会像」 (日本近代文学会北海道支部会報 (11), 57-31, 2008-05) ※ 私の問題意識とはかぶらないようですが、必読です。…

「誰の思想も大概同じ様に成つては、小説を書いても一向珍しく有るまい」

ようやく星一『三十年後』を完読したわけですが、最高の一行を選ぶならこれです。 まったく、現代の小説雑誌を読んでて面白くない理由はそこなのです。私も好きこのんで明治大正や古代ギリシアを漁っているわけではありません。 じゃあ、『三十年後』自体は…

星一…

星一(ほしはじめ)と打ち込んで、「星一徹」と出るのは想定内ですけど、「星一号作戦」は想定外でした。サイド1にでも潜んでいたか。

星一『三十年後』 その12 英雄崇拝熱という病

大正の未来小説『三十年後』もあと少し。引用を続けてみます。 健康や富が平均した大正37年でも、科学の進歩を悪用し、他人になりすまして名誉を盗む詐欺師は根絶できていませんでした。九段坂に出現した偽嶋浦のように。 ※ 『好意に解すれば無邪気なる一…

星一『三十年後』 その11 九段坂の上 自分に似過ぎた人

ユートピア未来小説なんてもんはえてして、作者の都合のいい願望を並べたてただけの退屈な話になりがちでして。今読んでる近デジ版『三十年後』も中だるみ気味になり、「ウソウソ」「バカヤロ」といった落書きが目につきます。気持ちはわかるけど本に落書き…

星一『三十年後』 その10 念写文学の行く末

念写術が普及し、誰でも気軽に小説を書ける大正37年の未来。でも、文士の貧乏さ加減は大正初年と大差ないようです。 ※ 『薬の力で、天才は至る処に出来まして、盛んに銘々書きますから昔の様に、紅葉、露伴、或は漱石、鷗外、又は坪内先生と云つた様な大家…

星新一『人民は弱し 官吏は強し』(新潮文庫 1978) より 『三十年後』評

「日本SFの父』星新一が、「日本SFの父の父」星一の『三十年後』を語った一節。 星一は政治家の後藤新平と親しく、会うたびに「ばかにつける薬はまだか」とからかわれていました。 ※ そのためもあって、星は「三十年後」と題する未来を舞台にした小説め…

星一『三十年後』 その9 大正37年の上野

『日本略史』や『聖勅』あたりの、昭和戦前戦中の星一の著述を読んでしまうと、正直、熱がかなり冷めてくるのを感じます。が、ここまで『三十年後』を読みかけてやめるのもすっきりしないし、あれはあれ、これはこれということで。 嶋浦翁と案内の三浦一家を…