核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

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吉田精一『芥川龍之介 Ⅰ』の「将軍」評

 吉田精一吉田精一著作集 第一巻 芥川龍之介 Ⅰ』(桜楓社 一九七九(昭和五四)年)より

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 龍之介はこゝで当時の偶像破壊、英雄否定の風潮にもれず、人間性の自然さを価値評価の基準としている。戦争に対する自由主義見地からの批評、偽善に対する嫌悪が、この作品の裏に色濃く流れて、彼の眼を余計意地悪く尖らしている。
 (一六〇ページ)
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 あとがきによれば上記文の初出は一九四二(昭和一七)年一二月だそうです。小林秀雄の悪意に満ちた「将軍」評を含む「歴史と文学」と同時期であることを考えると、勇気ある評といえるでしょう。