核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

トルストイ 『戦争と平和』 その6 ピエール救世主伝説編

 『カラー版 世界文学全集 第20巻 トルストイ 戦争と平和2』河出書房新社 1966(昭和41)年。第3巻第1編、56~57ページ。

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 ある時ピエールは、共済組合員の一人から、使徒ヨハネの黙示録からひきだされた、ナポレオンに関するつぎのような予言を聞かされた。
 黙示録第十三章第十八節には、こう言われている―「ここに知恵あり、知恵ある者は獣の数をかぞえよ―獣の数は人の数にして、その数は六百六十六なり」
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 この666がどうのという予言は、本来はローマ皇帝ネロを示す暗号だったみたいですけど、あっちこっちで好き勝手に流用されてます。『北斗の拳』の第一話でも、こめかみに「666」と書いたモヒカンさんたちが村を襲ってました。秘孔突かれましたけど。
 で、フランスの文字をヘブライの計数法で換算すると、「皇帝ナポレオン」は「666」になるという予言があったわけです(作中では。本当にそうなるのかは、フランス語もヘブライ語も知らない私にはわかりません)。
 で、「666」は「42か月のあいだ」支配すると(黙示録第13章第5節)。気になったピエールは「皇帝アレクサンドル」だの「ロシヤ国民」とかを数字に置き換えるんですけど、どうしても42にも666にもならない。で、つい自分の名前「ピエール・ベズーホフ」もやったけどダメ。国籍名をつけたり、deやleを足したりしたあげく、やっと「ロシヤ人ベズーホフ」からeをはぶいたら、「666」になることを発見します。
 「そう、ナポレオンを倒す救世主はピエールだったんだよ!」
 「な、なんだってー!」
 ・・・名作の最も愚にもつかないところだけをあげつらっている、とは思わないでください。
 農民兵プラトン・カラターエフの人生哲学や、エピローグ第二編の歴史観が、上記の大予言よりまともなものだとは思えません。