核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

木下尚江の皇帝暗殺否定論

 大逆事件の3年前。社会主義運動を離れた木下尚江は、個人雑誌『新生活』で非暴力主義を訴え続けていました。以下の暗殺否定論もその一つです。

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  此の不人望の皇室は、圧制皇帝の血の高価を払つて、多少愛燐の同情を買ふことが出来たであろう、(略)或は正当防御の理論により、或は復讐の激情により暗殺は古来世界の史上に幾多血痕の汚点を残した、然れども不正の手段の結果は、常に只だ其の悪敵に意外の寿命を恩賜するの外、何の得たる所も無い、
 木下尚江 「暗殺」 『新生活』3号 1908(明治41)年3月5日
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 この15日後に幸徳秋水が書いた「友人木下君の『新生活』」およびトルストイ主義への反論は、当ブログの2月3日の記事をごらんください。木下尚江は暗殺は不義なだけでなく無効でもあると説いているのですが、幸徳秋水は聞き入れなかったようです。
 なお、上記の「圧制皇帝」とは、(さしあたっては)暗殺されたポルトガルの国王のことを指します。日本であんな事になるとは思わなかった、とは、大逆事件後の尚江語録にある言葉です。