核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

木下尚江の皇室否定論

 皇帝暗殺には一貫して批判的だった尚江ですが、皇室礼賛者ではありませんでした。教文館『木下尚江全集』第二十巻より。

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・昭和四年九月二十三日
社会主義、皇室中心主義、何れも誤り。
(青木吉蔵編 『木下尚江翁語録』)

 木下尚江は(略)軍国主義のさかんな時代に、大逆事件について質問したとき、この老社会主義者が「あれはムツヒトが自分の顔に泥をぬつたようなものだ」と、一言の下に答えて私をおどろかせた。
(神崎清「編者の言葉」より 『大逆事件記録 第一巻』 一九五〇・六・一五)
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 後者の発言については、時日を特定できる証言も別にあったと記憶しています。尚江が秋水について新聞等で語りはじめたのは1932(昭和7)年、1937(昭和12)年没なので、おそらくはその間かと。
 それにしても、なんでスターリン毛沢東なんかがのさばる前に、社会主義は誤りだと宣言しなかったのか。社会民主党平民社幸徳秋水と一緒だったころ(1900年代)の尚江は「世界平和を実現できるのは社会主義しかない」と考えていましたし、それは仕方のないことですけど、できたらソ連の圧制が始まった時点で誤りを認めてほしかったと思うしだいです。矢野龍渓にはそれができたのですから。