核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

『江戸川乱歩全集 第21巻 ふしぎな人』光文社文庫 2005

 「あらっ。おじさんだわ。おじさんがとんでいくわ。」
 裏表紙に小さく書かれたこの一文を見て、名古屋栄の三省堂書店で衝動買いした本です。装丁・註釈・解説のすべてから、怪人二十面相ものの魅力をわかっている感が伝わってきます。
 特に『たのしい二年生』1958年8月から翌12月に連載された表題作と、同時期の二本の「かいじん二十めんそう」は貴重です。

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 「それから、もう一つわからないことがあるんです。二十めんそうは、どうして空をとぶんですか」
 「それは、二十めんそうがフランスの発明家から買った、せなかへとりつけることのできる、すごく小さなヘリコプターなんだよ。二十めんそうは、木の上やなんかにそのきかいをかくしておいて、さいごには、いつも、それでにげ出していたのだ」
 明智たんていは、なにもかも知っていたのでした。こうして、さすがのかいじん二十めんそうもつかまってしまったのです。(同書582ページ)
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 もう少し高年齢層向けの『宇宙怪人』にも出てきた背中ヘリですが、この本の654~655ページに学術的な註釈がついてまして、実用化されたという記録はないそうです。なお、『宇宙怪人』は怪人二十面相が宇宙人の名を騙って世界平和を訴えるという、三島由紀夫の『美しい星』を思わせる異色作でして、いずれ「核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ」でも紹介させていただきます。
 それにしても上記の質問。「どうして」というのは手段ではなく動機を聞いているように思えるのですけど。それは明智たんていにもわからないのかもしれません。