核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

2021-12-01から1ヶ月間の記事一覧

北原白秋『思ひ出 抒情小曲集』も読んでみた

九州柳河の、旧家のTonka John(大きい方の坊っちゃん、という意味らしいです)として生まれ育った北原の、幼少年時代の心象をつづった詩集。 さすがに表現が凝ってるというか、自爆だ体あたりだや、「一二三四五六七」は出てこないな、と思ったらありました…

北原白秋『邪宗門』読んでみた。

戦争詩だけで詩人を評価するのもどうかと思い、北原白秋の代表作『邪宗門』を読んでみました。 こういう退廃的な心象風景の乱舞に酔うには、こちらの感受性が衰えてしまったようです。一語一句たりとも見逃さないようていねいに読んだはずなのですが、期待し…

初陣のハワイ奇襲で体あたりな北原白秋

前々々回にこれで最後と書いてしまいましたが、まだ体あたり詩が残っていました。 「Z旗」(『大東亜戦争 少国民詩集』)。 ※ 待ちに待つたる初陣(うひぢん)の ハワイ奇襲だ、爆撃だ。 風に衝き行く何万里、 うなれプロペラ、どこまでも。 母のをしへに身…

なにげに映画化されてた北原白秋

『この道』という題で、二〇一九年に北原白秋と山田耕作の映画があったようです。

「一二三四五六七」と詠う北原白秋

自爆とも体あたりとも書いていませんが、そうとしか読めない内容です。題名は「航空母艦」。 ※ 見ろさしちがへ戦法だ。 撃沈、撃沈、また撃沈、 空母は見る見る沈んでく。 一二三四五六七。 (『白秋全集28 童謡集4』四一三頁) ※ 前の連に「ミッドウェー…

ほんと、体あたりが好きな北原白秋

北原の自爆・体あたり詩の紹介も、『大東亜戦争 少国民詩集』に関してはこれで最後です。題は「まかせろ」。 ※ 僕の兄さん、海軍だ。 いいな、少年飛行兵。 ゆくぞ、雷撃、体あたり。 俺にまかせろ、さう笑ふ。 (『白秋全集28 童謡集4』三七四頁) ※ 雷撃…

東条英機首相に諂う北原白秋

この「東条さん」(『大東亜戦争 少国民詩集』)という詩もわりと知られているので、第四連を引用するにとどめておきます。 ※ 帝国議事堂、曲(まが)り角(かど) 少年少女に手をあげる。 「お早う、禊(みそぎ)か、よし、行つた。」 お馬で声かけ、とつと…

十二月八日への誓いを強要する北原白秋

「誓へこのときこの八日」(『大東亜戦争 少国民詩集』)。「誓ふ」ではなく「誓へ」、つまり命令形です。 ※ けふだ、大詔奉戴日、 ああ、あの時だ、あの八日。 宣戦布告、あの電波、 朝のラジオのあのマーチ。 直立不動、しんとして、 涙ながれた、僕たちは…

デービット・J・ルー著 長谷川進一訳『松岡洋右とその時代』(TBSブリタニカ 一九八一) その2

松岡洋右と北原白秋の接点が見つかりました。 ※ (一九三三(昭和八)年)、政党解消連盟の会合では、有名な詩人北原白秋が作詞した同連盟の歌をうたった。 (一七二頁) ※ 政党解消連盟の歌、調べてきます。

少年飛行士にも自爆を命じる北原白秋

北原白秋は多くの童謡を書いてもいますが、少年のいのちを大切にする人ではありませんでした。 ※ 空の魂(たましひ)、あの人たち、 少年飛行士健気(けなげ)だな。 雷撃、爆撃、必中弾(ひつちゆうだん)、 ぐわんと捨身の体あたり。 (『白秋全集28 童…

偵察機を自爆させて喜ぶ北原白秋

偵察機なんてのは、生還して敵情を報告するまでが任務だと思うし、第一普通は爆弾や魚雷を積んでいないので、体当たりしてもダメージは与えられないとも思いますが。 国民的詩人の考えることは違いました。珊瑚海海戦での偵察機を詠った詩「還らぬ偵察機」の…

自爆美に酔いしれる北原白秋

たとえば、「九軍神」という詩があります。 ※ ああ、あの特別攻撃隊。 つひにかへらぬあの五隻。 (『北原白秋全集28 童謡集4』三三八頁) ※ この時期にはまだ「神風特攻隊」とは呼称していませんが、自爆を前提とした小型潜水艇の出撃です。なんで五隻な…

北原白秋「言葉」(『大東亜戦争 少国民詩集』より)

小林秀雄の場合と異なり、北原白秋が戦争詩を書いていたという事実はすでに知れ渡っており、ネットでもよくネタにされています。そういう詩人(?)の詩句をつかまえて「戦争を賛美している!けしからん」とやっても学術上の新発見にはならないと思うので、…

北原白秋「ガンジー」(『大東亜戦争 少国民詩集』より)

『大東亜戦争 少国民詩集』なんて題の本は、読まなくても「戦争ばんざい 日本ばんざい」式のクリシェ(決まり文句)ばかりに決まっているし、すでに他の方が紹介してることもあるわけです(前回の「大東亜地図」にしても、早川タダノリ氏の著作に紹介されて…

北原白秋「大東亜地図」(『大東亜戦争 少国民詩集』より)

一味違う戦争便乗詩。そういう印象を受け、図書館で『北原白秋全集 28 童謡集 4』を借りてきました。 絵文字にルビつき。つまり(文字化けご容赦)、 [●](ひのまる)だ Ω(はうだん)だ ✈(ひかうき)だ といった具合なのです(原文はたて書きなので、…

デービット・J・ルー著 長谷川進一訳『松岡洋右とその時代』(TBSブリタニカ 一九八一)

後の外務大臣、松岡洋右(まつおかようすけ)が外務省に入ったのは一九〇四(明治三七)年、つまり日露戦争開戦の年でした。上掲書はその事情について、 ※ それから、外務省に入ると徴兵猶予の特典があった。日本がロシア帝国に宣戦を布告したのは一九〇四年…

福地桜痴『女浪人』論、八割方完成

とはいえ、かんじんの題名が決まらず、注も完成していないわけですが。 それらを決定するには、もう一度国会図書館に行く必要がありそうです。

齋藤伸郎「矢野文雄と明治十四年の政変」(『近代日本研究』 二〇一九)

「矢野龍渓」と名のつく論文は一通り読んだはずですが、本名の矢野文雄、つまり政治家としての矢野についてのこの論文は、うかつにも読み落としていました。福地桜痴と福地源一郎にも言えることですが、ほとんど別人かと思えるほど、活動範囲の広い人でして…

月も変わったことだし

小野梓への未練はいったん断ち切って、福地桜痴『女浪人』論の完成をめざそうと思います。 題名と枠組みをどうするかは、今日一日かけて考えるとして。なんとか今月(今年)中に形にしたいものです。