核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

アリストパネスのソクラテス批判をめぐる覚え書き

 いや、アリストパネスソクラテスを批判したこと自体を責める気はないし、アリストパネスにはその資格があると思います。ただ、「信仰や伝統の破壊」ゆえに責めるのは、どう考えても見当はずれだと思うのです。
 言っちゃあなんですけど、アリストパネスは初期作品『アカルナイの人々』で国家の枠を超えた経済共同体を提唱し、『鳥』では動物と人間が共存する未来を描いた人です。そういう人がソクラテスを批判するとしたら、むしろ因循姑息のゆえをもってするほうが、筋が通っていると思うのです。
 私はアリストパネスを、ソクラテスよりも、ましてや同時代の思想家の誰よりもすぐれていると思っています。にもかかわらず、『雲』にだけはアンフェアさを感じざるをえないのです。
 博士論文『明治の平和主義小説』の最後の一行を書く段階になって、いったい何を悩んでいるんでしょうか。いや、そういう段階だからこそです。問題はもはや「明治」ではなく、「平和主義」と「小説」の本質なのです。